2XXX年、人類はある技術を発展、完成させることになった。仮想現実、第二の世界の構築である。
人々は生活の大半をこの電脳世界で生きていくようになる。平和も平和、現実となんら変わりない世界。
しかし、ある異物が発生したことにより、電脳世界は危険にさらされることになる。人々を無差別に襲撃、データを消去…即ち電脳世界の人間を殺す『ボイド』という怪物が現れるようになったのだ。平和だった電脳世界に突如として襲来し、データの消去を行う『ボイド』たち。人々はそれに対抗すべく、アバター…電脳世界での人間を書き変えるパッチ『アルターエゴ』の使用を開始した。『アルターエゴ』は歴史に名を連ねる偉人たちの功績、人格、能力等のデータを凝縮したもので、これを使用したアバターはパッチごとに登録された偉人の力を手にいれることができるもの。または、偉人たちを擬似的に再現するものである。『アルターエゴ』を使用し、『ボイド』の撃退を遂行する平和のための組織、それを『メサイア』と呼ぶ。
0と1の虚無に塗り潰されていく電脳世界。この末路やいかに。
「…と、まぁ、ここまでが『メサイア』創設までの話だよ。先程述べたように、電脳世界での我々は未曾有の危機に陥っている。電脳世界で死亡すれば現実世界でも無事では済まないからね。脳死するだけだから肉体は生きてるんだけど…。生きてるからいい、話ではないもの。
それじゃあここからが本題だよ。メサイア創設から数年後、『アルターエゴ』使用者の複数名が失踪する事件が起きた。それだけならばまだ良かったのだけど、まぁご察しの通りそれだけじゃなかったんだ。その失踪者たちが新たな組織…『デザイア』を形成、『ボイド』たちを指揮して襲撃を開始した。今まで無作為に出現していた『ボイド』たちが集団で、しかも正確な指揮と殺意を持って都市を襲うようになったんだよ。無論、我々も早急に対策を始めたとも。人口が多く狙われやすい都市にメサイア支部を設置、二十四時間体制で『デザイア』の動向を伺っている。
そう。それがここ、都市No.698防衛支部『ウロボロス』。最重要警戒区域なんだ。」